ニケの旅 囁くは天使か悪魔か

トロントの前を通らずに元来た道に戻るには、どうしても不気味な遺跡の前を通らないわけにはいかなかった。
ニケは目覚める。遺跡の前を通らなければというところで記憶が飛んでいる。
朝起きて、顔を洗いにいくと、「あの人は悪魔だ」と子供に言われる。
母親らしき人が子供をさっと連れて行く。
「ニケ、気にするな」
李猫に言われるが、元々気にしていたらキリがないのだから、気にしているのは李猫のほうだ。
夜、目が覚めると、シスターがニケのベッドの前に跪いて祈りを唱えている。
「このシスターは何かしているぞ」
と誰かが囁く声がした。
「私にもあなたくらいの弟がいて。旅の行く末を祈らせてください」
「このシスターを殺せ」
と声がする。
目が覚めた。何だ、ただの夢だったか。
ベッドの周りに、魔法陣が描いてある。ニケの胸元は血まみれ。
まるで生肉の血を塗りたくったようだった。
一体何事だと思っていると、李猫が
「ニケ、そこにいたら危ない。こっちにくる!」
李猫が魔法陣の外からしきり呼ぶ。
「ニケ、そこにいたら危ない、こっちにくるんだ!」
李猫じゃない。あいつだったらもっと訛った口調で魔法陣の中に入ってでもニケを連れ出す。ニケはツーハンドソードを握り、李猫に化けた何かに向かって振った。


「魔法陣から出たらだめですよニケさん。悪魔を退治しなきゃ」
「ニケ、生肉をいきなりかじりだしてどうなるかと思ったさ」
目が覚めるとホンモノの李猫。
「もうすぐヴァンが連れてきたエクソシストたちが戻ってくるさ」
ヴァンが連れてきたエクソシスト二人組を見てニケは驚愕した。
姿が成長していてもひと目でわかった。
女のエクソシストは探していた姉のルネだと。

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