そういえば小さい頃、片翼の男が墜落してきたのを助けたのを思い出した。
「やあ。俺はヴァンって言うんだ。一人?」
話しかけてきたのは角の生えた男だった。
「ヴァン、ナンパすんなよ。置いてくぞ」
彼らの仲間は角の生えているヴァンにあたたかそうだった。
「俺はこの子を口説いていくから先に言ってて」
こいつは何を言っているのだろう。
ヴァンに仲間に入らないかと誘われる。
「俺の仲間たちはみんないいやつだ。あんたのことも好きになってくれるに違いないよ」
「姉を探さなきゃいけないから」
と断った。
その直後、ヴァンのパーティーは全滅していることを知る。
酷い死に方だった。
角の生えている人間を探している集団に襲われたらしい。
「ニケについて行かなければよかった」と言うヴァン。
そんなもんだよねと思ってしまうニケ。
そこにヴァンの仲間を殺したと思しき一団現る。
「角の生えてる男の居場所を教えろって言われても、あいつらは絶対にお前の居場所を教えなかった」
角は穢れ病の妙薬になると、高く売れるらしい。
ヴァンとニケはその集団を二人で蹴散らす。
逃げていく残党を一人残らず捕まえて、ヴァンがトドメをさしていた。
墓にヴァンの仲間を埋めたあと、ヴァンは言った。
「俺はみんなの親に形見を届けたあと、必ずあんたと合流する。名前を教えてくれ」
あの仲間に誘った気持ちは嘘じゃない。
ならば、あのついていかなければ良かったって言葉は何?
本当に仲間を助けたかっただけなのだとしたら……。
「ニケ=ノア」
「ヴァンだ」
こいつは、嘘をついてなさそうだった。
「お前も頑張れよ」
と言って、拳で胸を軽く叩き合って別れた。
お互いの冒険にエールを。
2017 Geresha open.