ニケの旅 姉の行方

そもそも冒険者制度ってなんなのだ。聞いたこともないとニケは李猫に聞いた。
紋章を特殊な絵の具で刻むことによって、特殊な技能を習得することができる便利な制度だと李猫は説明する。
でも初心者に強すぎる術を与えると、その術の使い道を誤ったり、振り回されたりするために、素養が育ってから習得することになる。
経験値は自己申告制で、自分で倒した魔物や解決した事件を報告することによって採点される。
それと冒険者ギルドの質疑応答によって、総合点が出て、それで習得できる段階――レベルが決まる。
そんな説明を聞かされたが右から左だった。
第一ややこしい。そんな技能を身につけずとも、剣術の腕を磨いたほうが早い。

ようやく姉の情報を見つけた。
街のはずれにある人形屋敷に当時のルネにそっくりの、角を生やした人形があったのだ。
「これは当時領主様がカワイがってた子だ」
「姉は可愛がられて育ったのか」
よかったと思ったら続きがあった。
領主の性格も、性的な趣味もよくないとか。
ニケはオーギュスタンという領主のところに乗り込んだ。
「あの子供ならオークションで売り払った」
と言われた。詳しく聞き出すと、
ルネに暴行を加えた上に、食べ物を与えずに何日も放置していたらしい。先に死んだ隣の子供の死肉を食べて飢えをしのいだルネを、鬼の子として売り払ったとか。
「エクソシストたちが買っていった。孤児や身寄りの無い子を退魔師に育てるあいつらのところだ。きっともう死んで……」
「外に出ていてくれないか」
とニケはニコルと李猫に言った。
仲間が出て行ったところを見計らい、ニケは迷わず剣をオーギュスタンに振り下ろした。
夕方になり、オーギュスタンの館の入り口で待っていた李猫たちと合流した。
人を殺してきたとわかっていても彼らは待っていてくれた。
彼らに迷惑をかけてはいけない。
ようやく見つけた仲間とお別れすることになる。
それでもいい。ニケの旅は終わったのだから。

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